日本の伝統菓子の中で、せんべい、おかき、あられは特に親しまれている存在です。これらが「米菓」として知られるようになったのは昭和からですが、具体的な違いをご存知でしょうか?今回は、それぞれの特徴や歴史について詳しく見ていきましょう。
せんべい、おかき、あられの違い
せんべい、おかき、あられの主な違いは、使用するお米の種類にあります。せんべいは「うるち米」から作られ、おかきとあられは「もち米」を使用しています。もち米を使うおかきとあられは、焼くと膨らみやすく、せんべいに比べて柔らかい食感が特徴です。
また、おかきとあられはサイズによって区別されます。大きいものがおかきで、小さいものがあられと呼ばれます。例えば、ひなあられがあられの代表例です。昔は原料や製法、食べる人によっても呼び名が異なることがありましたが、現在は主に材料と大きさで区別されています。
地域によっても呼び方が異なり、関東では「せんべい」「あられ」が一般的ですが、関西では小さな米菓も「おかき」と呼ばれることがあります。また、最近ではもち米を使いながらも形が丸いものが「せんべい」として販売されることもあります。
せんべいの起源
せんべいは、うるち米を原料に平たく焼いたもので、もち米よりも粘りが少ないため、硬めの食感が特徴です。一般的には、米から作られる塩せんべいがよく知られていますが、他にも小麦粉で作られる「瓦せんべい」なども存在します。
せんべいの起源についてはさまざまな説があります。たとえば、埼玉県草加市の団子屋「おせんさん」という人が、旅人から教わって余った団子を平たく潰して焼いたのが始まりだという説や、平安時代の僧侶・空海が中国から持ち帰ったという説もあります。また、千利休の弟子が考案したという話も伝わっています。
せんべいが広く普及したのは室町時代以降で、特に江戸時代には多くのせんべい屋が誕生しました。当時のせんべいは、小麦粉と砂糖を練って焼いたものでした。中でも塩せんべいは庶民のお菓子として広まり、農家では残りご飯を蒸し、塩を混ぜて竹筒で丸く抜き、天日干しして炭火で焼く方法が一般的でした。
現在のように醤油を塗った塩せんべいが登場したのは1645年以降で、江戸近郊の町屋や千住、金町、柴又、草加などで人気を博しました。特に草加せんべいは、塩せんべいの代表格として広く知られるようになりました。
せんべいの名前の由来については、団子屋のおせんさんの名前から「おせんべい」と呼ばれるようになった説や、千利休の弟子である幸兵衛が「千」の字を頂いて「せんべい」と名乗ったという説が伝わっています。
おかきの起源
おかきは、せんべいと同じくお米を原料としていますが、せんべいがうるち米を使うのに対し、おかきにはもち米が使われています。また、あられより大きいものがおかきと呼ばれますが、その大きさには厳密な定義はありません。
おかきの始まりは、お正月に神様にお供えした鏡餅を槌で割り、それを揚げたり焼いたりしたものに由来します。かつてはこの作り方が一般家庭で広く行われていました。おかきという名前は、割った餅を意味する「欠きもち」に由来しており、室町時代には宮中の女性たちが「お」をつけて「おかき」と呼ぶようになったことから、現在の名称になったと言われています。つまり、「おかき」という言葉は、もともと京都の言葉から生まれたのです。
あられの起源
あられという名前の由来には、冬に降る氷の粒「霰(あられ)」の大きさに似ているという説や、炒った餅が鍋で跳ねる音が霰の降る音に似ているという説があります。奈良時代の宮廷では、あられがもてなし料理として用いられ、特に海外からの賓客へのおもてなしに供されていました。
当時のあられは、現在のように食べやすい形状ではなく、炒った米粒で作られていました。おかきとあられの違いはサイズで、おかきよりも小さいものがあられと呼ばれます。また、「あられ」という呼び方は主に関東で広まりましたが、関西ではあられも「おかき」と呼ばれることがあります。
柿の種の誕生秘話
おやつやおつまみとして人気の高い柿の種も、もち米を原料としたあられの一種です。柿の種を初めて作ったのは、新潟県長岡市にある米菓メーカー「浪花屋」です。もともと浪花屋はうるち米を使ったせんべいを製造していましたが、後に大阪のあられ作りを取り入れ、もち米を使ったあられを作るようになりました。
当時はすべて手作業で、薄くスライスしたもちを何枚か重ねて小判型の金型で切り抜いていましたが、ある日、金型を誤って踏んでしまい、元の形に戻せないまま使用したところ、歪んだ小判型のあられが出来上がってしまいました。そんな形のあられを売りに出したところ、あるお客さんから「形が柿の種に似ている」と指摘され、これがヒントとなって大正13年に柿の種が誕生しました。
まとめ
日本の食文化の中で長年親しまれてきたせんべい、おかき、あられ。それぞれの違いは、原料と大きさにありますが、店頭にはさまざまな味や食感の米菓が並んでいます。次にこれらのお菓子を味わうときには、その名前の由来や歴史に思いを馳せながら、独特の食感を楽しんでみてください。